うつ病回復期にある人が「うつ病九段」を読んでみた

この記事は約4分で読めます。

思ったよりも時間がかかりましたが、話題になっていた「うつ病九段」を読了しました。今回はその感想を書いていきたいと思います。

まずはこの本について触れておきますね。

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どんな本なのか

Amazonの内容を拝借します。

『ふざけんな、ふざけんな、みんないい思いしやがって』空前の藤井フィーバーに沸く将棋界、突然の休場を余儀なくされた羽生世代の棋士。うつ病回復末期の“患者”がリハビリを兼ねて綴った世にも珍しい手記。

棋士である先崎学氏が経験したうつ病の手記です。

自分が書いた【うつ病発症物語】とコンセプトは近いですね。

当時は読んでませんでしたが・・・。

 

最初は生々しくも退屈になっていく日常の描写

出だしはうつ病の症状が生々しく出てきます

ふと自殺しそうになる話や頭がまったく動かなくなっていく場面などはある意味わかりやすいです。

だが文章は読んでいくほどに非常に退屈になっていきます。でも誤解をしないでいただきたいのは、うつ病を患ってしまうと、今まで普通にできていたことができるようになるのがゴールであるからです。だからこそ描写としては生の声なのであると思いました。

センセーショナルに描くでもなく、退屈だった時も退屈だと書く、揺り起こしがあればそのまま描く、だからこそのリアルさがあると。

そしてこの本のいいところは次の点にあります

うつ病を乗り越えるヒントの山

筆者の場合、非常に恵まれていた環境と閃きなどがあって、スムーズに回復へ進んでいくように人によっては見えるかもしません。

どうすればうつ病の恐怖と戦い、乗り越えるかというヒントはそこかしこに転がっていることに注目していくとこの本は宝の山です。

まずは筆者の兄が精神科であった点、そして多くのことは語らず、「時がたてば治る、安定する」と言い続けていた点。これは大きいです。ぶれずにしっかりと適切なことを言い続けることで患者としては安心感を生む。実際にうつ病の回復には休むだけの時間が必要な時期があります。

そして実際に人にも恵まれています。前述の兄以外にも奥様も理解のある方だし、後輩棋士も付き合いが非常にいい。それは今まで筆者が構築してきた信頼がもたらしたものであると考える。それは精神的には大きく感じられますね。

また特に筆者が回復に大きく影響を与えたのは次のことがあげられます。

棋士として将棋を打つ、そして矜持を失わなかった

つまりやりたいことをあきらめずに見失わなかったのが大きかったと思うのです。

本人の核ともいえるものがあり、あきらめそうになりながらもできるところからやっていって、最終的にそこに至るという過程も大きなヒントと言えます。

 

共感する点が多い

うつ病に対する偏見についても、しっかりと触れているんですよね。

そして筆者自身もうつ病という病気を知りやすい環境だったけど、それでも実際になってみると全然違っていたと。これが本当に自分にとっても実感としてあります。

こういうところもしっかりと書いているのが筆者の素直さであり、いいところだなとも思いました。

そして自分が経てきたうつ病との日々と似ている点は非常に多く、一度はまったくできなかった日常にある些細なことも次第にできてくる、そして揺り起こしについても書いている点は実際に発病した人は共感できるだろうなと。少なくとも自分は共感出来て、自分で考えてきた回復計画も間違いじゃなかったと思える内容でした。

 

読む際には注意も必要

正直うつ病に関しての描写は生々しいため、回復期に入っていないうつ病の方は悪化する恐れがあります。そして本を読むことができないレベルの症状の場合も無理して読んではいけません。正直きつくなります。

※実際に自分がまだ本が読めるようになってすぐに開いてみたもののきつくてすぐにやめた経験があります。

そのため今の自分のように回復期に入りかけている人、入った人、その後再発してしまっている方は非常に参考になるのではないかと思います。

またこの本の性質上将棋の用語がそこかしこに出てきます。自分は将棋の知識はまったくない状態でも違和感はありませんでしたが、そういうことに違和感が出る人にとっては苦痛かもしれません。

 

こんな人が読むと良いかも?

  • まったくうつ病について知識がないけれど知りたい人
  • うつ病がなかなか治らなくて回復のイメージがわきにくい人
  • うつ病のリハビリ中の人
  • うつ病回復期にあたって冷静にうつ病を見つめたい人
  • うつ症状が出ている人の心理状態を知りたい人

上記に当てはまる人には得ることが非常に多い良書だと思います。

 

最後に

自分が当ブログで書いた【うつ病発症物語】もそうですが、赤裸々に書いているので似た匂いを感じました。彼は優秀な棋士で、対して自分は誇れるところはないかもしれませんが、同じうつ病と日々を過ごし苦しんできた仲間としてシンクロできた作品でした。

今の自分の状態が非常に彼の終盤の状況に似ているから共感出来た部分もあり、自身の状況も冷静に確認することができました。

読むタイミングなどに注意が必要ですが、多くの方にうつ病というものを知ってもらうのに貢献して話題にもなったこの本の良さは納得がいきました。

ぜひこの感想を読んで、一人でも本書を読んでくださる方が増えると幸いです。


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